米軍の戦争に協力せよ!
<資料>有事法制のねらいを示す語録集
 『平和新聞』2002年2月25日号掲載

対米協力効果的に――「平和・安保研」報告
 
 「日米両政府は『日米防衛協力のための指針』に合意し、日本周辺地域で発生する紛争に対処するため、四十項目にのぼる協力を約束した。これらの日米協力を効果的に進めるためにも、有事法制を準備する必要がある。」(一九七七年十一月十二日、「平和・安全保障研究所」の「有事法制についての提言の考え方」)

私権を一時的制限――栗栖元自衛隊倒幕議長

 「この法律(周辺事態法)に基づいて本格的に米軍を支援しようとしたら、国内法の不備が必ず問題になります。例えば沿岸部の土地や道路の使用にしても、私権を一時的に制限せざるを得ませんが、現行法では不可能で、有事立法が必要です」(栗栖博臣元自衛隊統合幕僚会議議長、『週刊朝日』99年6月11日号)

周辺事態が有事に――梶山元内閣官房長官

  「周辺事態が発生すれば、米軍の基地があり、これを支援する日本は、直接的な攻撃対象になり得るのである。つまり周辺事態は、我が国自身の有事と密接不可分な関係にある。…その時、自衛隊が米軍を支援する協定も法律も存在しない」(梶山静六元内閣官房長官、『文芸春秋』99年6月号)

協力拒否させない――佐々元安全保障室長

 「周辺事態法案の後半になる訓示規定では、地方自治体も住民も協力せよ、と書いてあるが、具体的にどう担保するのか。日本海で負傷した米兵を病院に緊急輸送しても、病院に反米、反戦の主張があって拒否したらどうなるか。こうした場合も、有事法制があると自衛隊法百三条で、知事の命令で医療、運輸、建設の三業種は業務従事命令が出せる。有事法制と周辺事態というのは、密接不可分にあるので、有事法制を考えるべき時にきている」(佐々淳行元安全保障室長、「読売新聞」99年5月21日付)

強制のための措置を――グリーン日本部長

 「ガイドライン(日米防衛協力の指針)の見直しでは、東アジアで日本の防衛に直接影響を与えるような危機が発生した場合の、後方地域の範囲及び米国の作戦に対する日本の兵站支援(そして日本の防衛)の範囲のあらましが明らかにされた。これに引き続く立法過程では、自衛隊にその役割を担う権限が認められた。しかし、協力に消極的な民間機関や地方公共団体に対し、必要な協力を行うよう強制できる権限を総理大臣に与えるよう、さらに立法措置が必要である。朝鮮半島やその他の地域の有事あるいは日本への攻撃の際における日本の民間インフラの必要性を考えれば、それらの協力は決定的に重要である。」(同盟の「アーミテージ報告」の作成者の1人で、現在、ブッシュ政権の国家安全保障会議〔NSC〕日本・韓国部長を務めるマイケル・グリーン氏、坂元一哉氏との共同論文「冷戦後の日米同盟」、01年4月『比較研究』日本評論社)

後方支援に信頼性――グリーン日本部長

 「(周辺事態法案など)は、我々が描く長期目標に向かってのほんの「第一歩」に過ぎない。
 今後取り組まなければならないポイントを大きく三つに絞って論じたい。第1は、今回、実質的な作業を後回しにした日本有事における法整備への本格的とりくみだ。これは新ガイドラインの目的の一つである日本の後方支援体制の信頼性確保という観点から見て、不可避である。
 今回の「周辺事態法案」に盛り込まれた民間協力については、(1)民間・地方自治体の協力に強制措置はない(2)協力要請に応じない場合の罰則はない(3)運輸、郵政、厚生省など関係省庁所管の法令改正には手をつけない――ことになっている。これらは、戦後政治の中で必要以上に刺激的な響きを持ってしまった「有事法制」や「私権制限」という言葉の重みに、政府が抗し切れなかった結果だと推察される。
 しかし、例えば、米軍の医官が日本の病院で医療活動するなら医師法を改正しなければならないし、米軍の作戦機や艦船の優先航路を設定する必要が生じた場合には、排除される民間業者への補償などの法的措置が必要になろう。このままでは「周辺事態」に直面した時点で、協力しない理由を並べ立てる現場と泥縄式に協力させようとする「当局」との間に深刻な対立が生じることは避けられまい。事が起る前に、日本国民の自発的意思として、予めきちんと法整備を完了させておくことが、日本の民主主義の「強さ」の証明ともなるはずだ」(マイケル・グリーン/長島昭久米外交問題評議会研究員、「Thisis読売」98年6月号「新ガイドライン法整備 やっと「一歩」を踏み出した」)

日本の貢献大きく――アーミテージ・リポート

 「アーミテージ・リポート:米国と日本――成熟したパートナーシップに向けての前進」(2000年10月11日公表)「"日米防衛協力のためのガイドライン"改訂版は、日米共同防衛計画の基礎となるものである。しかし、太平洋全域に広がった日本の役割の下限を定めたものとみなすべきで、上限を示すものではない。そして、冷戦後のこの地域の環境の不確実性は、米日二国間の防衛計画にもっとダイナミックなとりくみを求めている。
 日本による集団的自衛の禁止は米日間同盟協力にとって束縛となっている。この禁止を取り払えば、もっと密接で、もっと有効な安保同盟となるだろう。…ワシントンは日本がさらに大きな貢献をし、もっと対等なパートナーになるのを歓迎することを明確にしておくべきだ。
 米国と英国のような特別の関係が米日同盟のモデルだ、と我々は思う。それには以下の要素が求められる。
・お互いの防衛責任の再確認 …(略)
・新・ガイドラインの誠実な履行。有事法制の国会通過も含む。……(略)
・シェアリング(費用分担)が、パワー・シェアリング(力の分担)へと進化すべき時期だ。次期新政権はこの問題に時間をかけねばならぬ。

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